ヽ(`Д´)ノ


by raa511

内なる敵は内向き指向


最近読んだ本。
作家の村上龍とデジタルガレージ伊藤穰一の対談的内容。

個を見つめるダイアローグ(村上龍)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478942269/

働くことと個の幸福、価値あるものはお金か信頼か、仕事と趣味は別物かなど、紹介されている話はそれぞれおもしろかったのだけれども、一番面白く感じたのが全体を通したテーマになっている「文明と個の未来」にまつわる部分。

成熟した先進国の文明では、話の通じる「小さなコミュニティ」への内向きのコミュニケーションをひたすら発達させる傾向があり、日本でもその傾向は強い。世界の大事件に対する国内メディアの無関心から、他の先進国に輸出されるほど完成度の高いオタク文化まで、すべて同好的な内向きのベクトルで、分かる人には分かる、という「洗練」の方向への進化であり、それは民主主義(分かりあえない人々が粘り強いコミュニケーションによって分かり合おうとする仕組み)にとって危険な兆候だよ、というもの。

民主主義の根幹を示す言葉として引用されていた言葉。
「君の意見には死んでも賛成できない。でも、君がそれを自由に言う権利は死んでも守る」

先進国の文明と個のレベルで強まってきている外部(異質)への無関心は良い悪いの話ではなく、日本の外交などでは合理的に考えて「危険」なレベルになりつつあるというのが村上氏の主張。現在の外交はアメリカとのべったりな関係を保険にして、東アジアでの孤立を確信犯的に許容しているが(世界のみんなから嫌われているわけじゃないもん的保険)、日本よりは世界が見えているアメリカがアジアでの外交方針を変えることは十分にあり得て、結果、裏切られたと感じた日本の「空気」がナショナリズム、孤立主義に傾く可能性は十分にあるという。

分かり合えるもの同士でさらに分かり合うという(内向きに高度化、洗練化する)進化が必ずしも文明と個の進むべき方向ではないんだよ、という視点がおもしろかった。そういう問題への処方箋としてコミュニケーションの「オープンネス」などのキーワードも出てきていましたが、まぁ、そのあたりの詳細はぜひ実際に読んでみてください。
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by raa511 | 2006-06-02 13:27 | 雑記